世界のフィンランド語
フィンランド語の人気が高いのは日本だけの傾向ではないようだ。最近はやりの,いわゆる「語学留学」の対象としてフィンランド語を選ぶことも,もはや非現実的ではなくなっている。夏,フィンランドで開かれる外国人向けのフィンランド語の夏期大学を日本から受講しにでかける人も,昔よりは圧倒的に多くなっていると思われる。
記事: Suomea voi opiskella sadassa yliopistossa (Keskisuomalainen 2011/07/25)
記事: Suomalaisturisti ei voi enää puhua salakieltä (Keskisuomalainen 2011/07/25)
たまたまアクセスした新聞サイト KSML.fi (Keskisuomalainen) のサイトに,外国人のフィンランド語学習についての記事が2つ載っていた。それによると,世界におけるフィンランド語学習の現状はこうなっている。
・何らかの形でフィンランド語を継続的に教えている高等教育機関は世界中で100大学,国の数でいいと30か国に及ぶ。
・フィンランドからフィンランド語の講師が派遣されているもっとも遠い場所は,北京と北米西海岸である。[私の知る限りでは,日本の大学への講師派遣はないようだ。]
・今年の夏,フィンランドでフィンランド語の講習を受講している外国人大学生は170人,4つのレベルに分かれて学習している。ただし,すべて既修者で,初級は1人もいないそうだ。
個人的な経験で言えば,1980年代ごろまでは,フィンランド語を勉強するのはフィンランド語などの研究者を目指す大学院生と,フィンランド人と結婚するなどの理由でフィンランドに住むことになった人がほとんどすべてだったような印象がある。ところが,最近は,フィンランド語を実用語学の一つとして勉強する外国人も増えている。EUの公用語の1つになり,通訳の需要が生まれたことも理由のひとつかもしれない。対訳辞書のある言語も増えてきたし,やさしい入門書も多く出されるようになり,フィンランド語が学習しやすくなったのも確かである。
日本は日本語ができる外国人を育てることを重視しているようだが,フィンランドは,フィンランド語ができる外国人を育てることよりは,フィンランド通,フィンランド・ファンを大勢育てて,フィンランドを識る外国人の裾野を広げることに重点を置いているように思われる。たとえば,日本に留学する外国人の大部分は,日本語・日本文化の研究が目的という印象があるが,フィンランドにフィンランド語・フィンランド文化の研究が目的で留学する外国人の割合は比較的少ない。
| 固定リンク
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 五木寛之「霧のカレリア」(2012.11.11)
- ビール会社直営の市電パブ - SpåraKoff(2012.08.08)
- ヘルシンキの市電博物館(2012.08.07)
- 作家 James Thompson(2012.04.26)
- Suomi-Neito のこと (2)(2012.03.03)
「言語」カテゴリの記事
- フィンランド語の電子朗読絵本 - kuvaäänikirja(2012.11.28)
- フィンランド語読み上げ iPad アプリ(2012.06.23)
- リンネルの手ぬぐい(2012.05.29)
- 素人による翻訳文学談義 ─ ソフィ・オクサネン「粛清」(2012.05.17)
- フィンランド語の人気が低下?(2012.03.21)
「教育・学校」カテゴリの記事
- フィンランドの学校もたいへんらしい(2012.08.06)
- フィンランド語の人気が低下?(2012.03.21)
- フィンランドの高校生の大学の選び方(2011.10.27)
- テレビは幼児の言語発達に悪影響(2011.10.20)
- フィンランドの大学の世界ランキング(2011.10.07)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント