エストニアの推理小説 - kriminaalromaan
エストニア語の推理小説というとあまり聞かないし,面白くなさそうな気がするが,Indrek Hargla イントレク・ハルクラの作品は例外らしい。エストニア作家同盟の英語広報誌 ELM (Estonian Literary Magazine) の最新号 (2012年春) がこの作家の作品の紹介をしている。
・Apteeker Melchior ja Oleviste mõistatus (2010) [薬剤師メルキオールとオレビステ教会の謎]
・Apteeker Melchior ja viirastus (2010) [薬剤師メルキオールと古井戸の亡霊]
・Apteeker Melchior ja timuka tütar (2011) [薬剤師メルキオールと処刑人の娘]
読んでいるわけではないので,ELM の記事を参考にすると,この三部作は,中世のタリンを舞台にして,エストニア人の妻に持つ主人公,ドイツ人薬剤師メルキオールが活躍する物語らしい。第1部は,発売後数ヶ月間,書店の売上ベスト10の中にとどまったというから,たいへんなベストセラーだったようだ。
タリンの旧市街は,怪談話などの伝説のある建物や場所が数多くあり,中世を舞台とする推理小説の舞台にぴったりの街である。
オレビステ教会 Oleviste kirik は,タリン旧市街の下町にあって,タリンの歴史的な建築物としてはもっとも高い尖塔をもつ教会で,海路でタリンに向かうと,遠くからも前面に見えるが,船の航行の目印になる高い塔として建てられたものなのだそうだ。ゴシック様式の尖塔が建てられたのは16世紀の初頭らしいが,建設当時,159mの高さの尖塔は,ヨーロッパ随一のものだったらしい。
古井戸と訳した Rataskaev は,旧市街の下町の名所の1つとなっている滑車式井戸 (ratas 車輪+kaev 井戸) の名前であり,また,この古いつるべ式井戸のある通りの名前でもある。
今のところ,第1部「オレビステの謎」のフィンランド語訳が出たばかりのほかは,同じ本のフランス語訳がまもなく出る予定しかないようで,残念ながら,日本の読者には手が届きそうにない。
よく利用する Apollo アポロ書店のオンライン書店で検索してみると,この三部作が電子書籍 (ePub)で買えるようになっていたので,さっそく昨日第1部だけ買ってみた。中身を覗いてみただけで,まだ読んでいない。なお,Apollo 書店のオンライン書店は,大きく模様替えし,クレジットカードでの支払い画面の使い勝手も前回(3月中旬) よりよくなっていた。
作家同盟の英語広報誌 ELM は,作家同盟の英語ホームページのリンクから,バックナンバーのあるページに移行すれば,記事を無料で読むことができるようだ。ただし,2年前の1010年春号までにしか置いてないところをみると,最新号は印刷版で読んでくれということだろう。
エストニア作家同盟英語広報誌 ELM 2012年春号の表紙。
写真は作家イントレク・ハルクラ氏
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