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自意識過剰症候群 - mida naabrid meist arvavad

 フィンランド人とエストニア人は,互いに相手が自分のことをどう思っているかが,気になってしかたがない点で,似たもの同士だという。

 記事: Masso: nii eestlasi kui soomlasi huvitab, mida naabrid neist arvavad (Postimees 2011/09/25)
 記事: Masso: nii eestlasi kui soomlasi huvitab, mida naabrid neist arvavad (ERR 2011/09/25)

 先ごろ,エストニアのイルベス大統領が,フィンランドの出版社からフィンランド語でエッセイ集(Omalla äänellä 自分の声で)を出版し,ベストセラーになっている(らしい)。同書の編集を担当した女性政治学者 Iivi Anna Masso 氏によれば,この本をめぐって,フィンランドとエストニアのマスコミで行われている論議を見ていると,滑稽なくらいにフィンランド人とエストニア人の国民性の共通性がわかるという。

 彼女が指摘する事例はこうだ。フィンランドの代表的なニュース週刊誌 Suomen Kuvalehti は,イルベス大統領が著書の中で「フィンランドの政治家たちはエストニア人を見下している」と主張しているとして,フィンランドの各政党の代表者にこの主張についての見解を質問した。もちろん,すべての政党はそれを否定した。同誌がこのアンケート結果を記事にすると,今度はエストニアのマスコミが「フィンランド人はイルベス大統領の主張を否定している」と大きく報じ,エストニアでも論議になった。ところが,彼女によると,イルベス大統領の本には「フィンランドの政治家たちはエストニア人を見下している」という意味の主張はどこにも書いてないという。

 そもそも,なぜそんな話になったのかというと,イルベス大統領が話題にしていたEUでのある出来事に尾ひれがついて,あとは著書の内容とは無関係に進んでいってしまったためとされる。外国人の本から自国に対する「否定的な記述」を目ざとく見つけるのはフィンランド人の性(さが),あるいは特技と考えられる。そのあとの議論の展開もそのような言説的背景を考えるとありそうなことと思われる。なお,イルベス大統領の本が爆発的に売れたのは,フィンランドのことが話題にされている外国人の本だからとする解釈がある。余談だが,ベストセラーは買われるだけで,中身を読まない人が案外多いというのはどこの国も同じらしい。イルベス大統領の著書は,だたフィンランド人にお決まりの議論のきっかけを提供しただけである。

 関連記事: Galerii: Ilves esitles Soomes oma artiklikogumikku (Postimees 2011/09/06)
 関連記事: Ilvese raamat on Soomes läbimüügi tipus (Postimees 2011/09/21)

 日本や日本人のことが外国でどう思われているかに異常なほど関心を持っているのは,日本人もまったく同じである。たとえば,韓国のアイドル芸能人のファンが多い一方で,韓国のマスコミの対日本論調にすぐに過剰反応して,インターネットに韓国批判が溢れたりする。日本人の女優が,ハリウッド映画やアメリカのテレビドラマに出演したりすると,全米的な話題になったかのようなニュースが日本では流れるが,そんな程度で外国の俳優に注目してくれるほど,アメリカ人は暇ではないことをすっかり忘れている。あるいは,「情報発信型の外国語教育」の主要な目的が,海外における日本に対する「誤解」を解くことであったりする一方で,日本人がふつうに外国旅行にでかけるようになってから,日本に流布する,外国に関する「誤解」「勘違い」「俗説」の類は,減るどころか,以前にもまして増えたような気がするから,日本人は勝手なものである。

 日本人論というのは,日本人は海外でこう思われている,これはどうしてそうなのか,またそう思われないためにはどうしたらいいか,みたいな論調がほとんどである。しかしよく読んでみると,その種の話は,日本人が,自分たちは海外でこう思われているらしいと思っているだけのことで,当の外国人が本当にそう思っているのかについての調査に基づくものとは思えないケースがほとんどである。つまり,自意識過剰の産物としか思えないような根も葉もない話題を,日本人が自分たちの間だけで真剣に議論しあっているのがほとんどだと思う。

 フィンランドでは,国際的な自意識過剰はフィンランド人の国民性と言われ続けてきたが,その点では日本人も同じだから,これがフィンランド人と日本人の共通点の1つであるといってもよさそうだ。私は,エストニア人はそうでないと思ってきたのだが,この政治学者の指摘が正しいとすると,今後は,日本人とエストニア人はどこが似ているかと誰かに聞かれたら,自意識過剰である点を指摘してもいいのではないかと思う。いずれにせよ,自分が気にするほど,向こうは気になんかしてくれないということを悟るのは,なかなかむずかしい。

 実は,この記事は,来月末(10/27~30)ヘルシンキで開かれる書籍見本市のための,エストニア向けの話題づくりが目的と思われる。この見本市の今年の主役は「エストニア」で,イルベス大統領の著書も展示されるそうである。

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主張する      väitma
事例        näide
弟分        väike vend
気を悪くする    solvuma
時々        aeg-ajalt
図書見本市    raamatumess

President Toomas Hendrik Ilvese raamatu esitlus Helsingis Eesti saatkonnas.

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