ジェンダーの社会化 - soorollid
エストニアの女性研究・広報センターで行われた研究によると,男女の役割についての社会的通念はすでに幼稚園で子どもに植えつけられているという。
記事: Lasteaed paneb tugeva tüdruku end nõrgana tundma (Postimees 2011/06/04)
記事: Ekspert: soorollide pealesurumine algab sünnihetkest (Postimees 2011/06/04)
男の子と女の子の興味や行動がいつのまにか分化して,男の子は男の子らしく,女の子は女の子らしく育っていくのは,生物としてのレベルで自然にそうなるのか,それとも生まれてから社会的に学んだ結果としてそうなるのか,についての論争は古くからあるらしい。最近は,後者の要因が非常に強く働いていることが主張されるようになってきた。
子どもが,自分の生まれ落ちた社会の習慣や規範に次第に順応していくことを「社会化」という程度のことはいつのまにかどこかで読むか聞くかして知っていた。日本語ウィキペディアによると「社会化(しゃかいか)とは,子供や,その社会の新規参入者が,その社会の文化,特に価値と規範を身に付けることを指す。遺伝子により先天的に獲得されたものではなく,学習により後天的に獲得されるものである。」
ジェンダーの社会化 (gender socialization) というのは,とくに性役割 (gender roles ─ 男女の社会的役割分担) に関する考えかたを習得することをさすらしい。要するに「女の子らしい」「男の子らしい」とか「女はそんなことをするものではない」「男はそんなことをするものではない」といった物の見かた・考えかたをいつのまにか身につけてしまうことだ。エストニアの幼稚園の男の子が「女の子はいや,掃除や,食事の用意をしないといけないから」と言ったりするのは偶然ではない。
男女の役割分担の大部分は社会化によって生まれたものだとする考えかたに基づいて,子育てや幼児教育の現場を観察してみた結果いろんなことが分かってきた。たとえば,女の子が生まれるとピンク系の着物を作ったり,プレゼントしたりするのがふつうだから,女の赤ん坊は最初からこの色で一日中暮らしているわけだし,幼稚園では,男の子と女の子の遊ぶコーナーを別々に設け,前者には自動車のおもちゃなど,後者には人形などを置き,子どもたちが自分の制別に合ったコーナーで遊ぶようにしつけられる,などということばふつうに行われる。あるいは,男の子が男に相応しくない行動をすると先生が不快そうな顔をしたり,掃除の手伝いを女の子に言いつけたりすることなども,社会における男女の役割分担を教えていることになっている。つまり,女の子は自然にピンクが好きになったり,自然にお掃除や台所仕事をするようになるわけではないと考えた方がいいわけだ。
単純化し過ぎだと叱られそうだが,男も女も社会的に作られると考えた方がよくて,男だからこう育つ,女だからこう育つ,と決まっているわけではないというふうにまとめていいだろう。これが最近の考えかたのようである。
関連ページ: 女性の色 - naiselik värv (2010/10/15)
幼稚園 lasteaed
強い tugev
少女 tüdruk
弱い nõrk
学校 kool
社会化 sotsialiseerumine cf. socialization
性別,ジェンダー sugu cf. gender
性役割,男女の役割 soorollid cf. gender roles
ジェンダーに基づいて soopõhiselt
男女の不平等 sooline ebavõrdsus
男女の差別化 soopõhine eristus
男女の釣り合いのとれた sooliselt tasakaalustatud
遊びのコーナー mängunurk
おもちゃ mänguasjad
不満 rahulolematus
温厚な rahulik
振舞う käituma
感情が表に出やすい tujukas
騒がしい lärmakas
寡黙な vaikne
言うことを聞かない sõnakuulmatu
言うことをよく聞く sõnakuulelik
協調的な leplik
自信がある enesekindel
掃除する koristama
食事を作る süüa tegema
人形 nukk
遊ぶ mängima
外見,体つき välimus
美しい ilus
いじめ kiusamine
ステレオタイプの stereotüüpne
権利が等しい võrdõiguslik
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