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国会議員の学歴 - kõrgharidusega saadikud

 新しくエストニアの国会議員になった人の9割が大学卒で,中に博士号取得者が6人いる。

 記事: Riigikogu kõige haritumad on sotsid (Postimees 2011/04/05)

 国会議員が大臣になると,議員の資格を失うので,その代わりの議員を,大臣の出身の党は国会に出すことになる。国会議員の顔ぶれが確定した時点で,議員たちの学歴を調べてみると,高学歴の議員の割合がもっとも高いのは,社会民主党で,議員の95%が大学卒の学歴をもつ。第2位は,与党第一党の改革党で94%,ついで野党第一党の中央党の89%,最後にIRL(祖国共和国連合) の87%となっているという。

 さてこの話,このまま読むともっともらしいが,よく考えてみると,記者が統計数字のことを少しも分かっていないことがわかる。

 もっとも議席数の多い改革党にしたところで議員数は33人である。その94%とは,単純計算してみると31人のことだ。もっとも議席の少ない社会民主党の議員数は19人,その95%は18人である。さらに,中央党は26人のうちの23人が大学卒,IRLは23人のうちの20人が大学卒ということがわかる。

 要するに,101人の議員のうち,大卒が92人 (91%) という数字をもとに議論しないと意味がなくなる。これを基準にして,各党のデータを比較してみると,改革党と社会民主党が平均より上,中央党とIRLは平均より下ということになる。しかし,すべての政党について議席数が33だったとして換算してみると,多い方から 31人,31人,29人,29人となって,いずれの党派も2~4人が大学卒でないだけの話だから,この程度の差では,各党派の平均学歴に違いは認められないと結論するのが,統計学的には妥当な見方である。

 さらに,博士号取得議員が,中央党8%,改革党6%,社民党5%,IRL4%というのも笑ってしまう。人数にすれば,中央党と改革党が各2人,社民党とIRLが各1人というだけの話である。ちなみに,IRLは,教育大臣の Jaak Aaviksoo と国防大臣の Mart Laar の2人が抜けたために,博士号保持者が2人減ったのだという。いずれにしても,党派の間の差を議論しても意味のある数値ではない。

 この記者はほとんど意味のない比較を,大真面目でしているだけだから,社民党議員がもっとも学歴が高い,という意味の見出しには根拠がまったくない。統計で嘘をつくといったことがよく話題になるが,このレベルでは嘘もつけない。

 それはそれとして,101人の議員の9割が大学卒で,6人が博士号を持っているという数字を日本と比べたとき,日本とエストニアの国会議員の学歴の差はあるのか,また差がある場合はどの程度なのかがわかったら面白そうだ。

 余談になるが,また,単なる個人的印象に過ぎないが,日本の政党で,もっとも東大出身者の割合が高いのは,自民党と共産党ではないかと思っている。共産党については意外に思う人もいるかもしれないが,労働者の党というよりは都市部に住むインテリ層の支持が強い党であるというイメージが私にはある。もともと労働組合が支持母体だったのは社民党 (旧社会党) で,ソ連共産党との関係も旧社会党のほうがよかったこともよく知られている。自民党と共産党は,党員に大学の同窓生で顔見知りがたくさんいるだろうから,いっそ連立したら,気心が知れていて面白いのでは,などと思うのは私だけかもしれない(笑) 冗談はともかく,日本はこれまでのようなことをしているわけにはいかなくなっている。政治を変え,社会や経済のしくみを変えていくための方法について,真剣に議論すべきときに来ていると思う。

リーキコク,国会 riigikogu
学歴の高い    haritud
高等教育     kõrgharidus
中等教育     keskharidus
社会民主党    sotsiaaldemokraadid,sotsid
改革党      Reformierakond
中央党      Keskerakond
祖国共和国連合 IRL
博士号      doktorikraad
議員       saadik
割合       osakaal

Riigikogu kõige haritumad on sotsid

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コメント

日本では学者や政治家の偽学位(Diploma Mill)が数年前に話題になったことがありましたが、エストニアにはないんでしょうか?こういう記事が記事になるというのは、高学歴への崇拝が強いのかなと思った次第です。

投稿: バルトファン | 2011/04/07 12:37

エストニアは人が少なく,互いに顔見知りが多いし,国内の学位の評価が高いので,ごまかすのは無理ですね。

高学歴への崇拝というよりは,優秀な人材が政治にかかわっている社会なんじゃないですか。それに大学に行く人は,みなさんちゃんと勉強するし。ろくに学校へ行っていない人が,政党の頭数を揃えるためにだけリクルートされて,知名度で票を集める日本との違いだと思います。

投稿: ブログの主 | 2011/04/07 14:11

「ろくに学校へ行っていない人が,政党の頭数を揃えるためにだけリクルートされて,知名度で票を集める」と聞いて、最近よくテレビ番組で見る、ある政治家の顔が瞬時にうかんできました。(笑)
それはともかく、日本も、優秀な人材が政治にかかわる社会になれば良いと思います。

投稿: D1994 | 2011/04/07 21:47

因みに、エストニアの大卒政治家は何系が多いのですか?理系?文系?

日本でのDiploma Millは学士ではなく、修士、博士が多かったと思います。今回の記事ではエストニアでは政治家に修士、博士の取得者が少ないということを記しているのでしょうか?政治家だけではなく、全般的に大学院へは行かないのでしょうか?質問ばかりですみません。

投稿: バルトファン | 2011/04/07 23:53

日本の大学が,戦後アメリカの影響で大衆化したのに対し,旧ソ連も含め,ヨーロッパの大学はエリートが行くものという傾向は変わらないと思います。

エストニアの場合,ソビエト時代,大卒エリートは,コムソモルの活動を経由して党の幹部になるか,作家・芸術系の仕事を選ぶかどちらかでした。党の大物でないと,企業のトップにも付けない。でも,ペレストロイカになって,党組織が壊滅したとき,作家や芸術家の中に政治を担当できる人材が大勢いたから,危機を切り抜けられたわけです。

大卒が飲食店の従業員をしている構図はひょっとすると日本だけではないでしょうか。1980年代の半ばの大卒者の就職難が世界的に問題になった時代の話ですが,アメリカのウィスコンシン州立大学の大学院生がフィンランドに留学していて,州都のマディソンの学歴は北米一高くて,タクシー運転手まで全員PhDを持っている,と冗談を言って,笑わせてくれました。


投稿: ブログの主 | 2011/04/08 10:48

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

投稿: 履歴書の書き方 | 2011/10/06 02:17

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