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ダイレクトメールの言語 - otsepostitus

 エストニアの言語法の基本理念に従うなら,国会議員選挙の立候補者が選挙運動のために選挙区の有権者に配る文書は,ロシア語系の住民が多い地区であっても,国語のエストニア語で書かれるのが原則ということになる。しかし,現実はそうなっていない。

 記事: Keeleinspektsioon venekeelse otsepostituse vastu ei saa (Postimees 2011/03/02)
 記事: Keeleinspektsioon venekeelse otsepostituse vastu ei saa (ERR 2011/03/02)

 タリンの西方,かつてソ連海軍の軍港のあった港町 Paldiski パルティスキは,政党支持率で第3党の祖国共和国連合 IRL (Isamaa Res Publica Liit) と第4党の社会民主党 Sotsiaaldemokraadid の候補が,ロシア語系の有権者層に食い込もうとして必死になっている激戦の選挙区で,エストニア語系の有権者に対してもロシア語の選挙運動文書を配布してしまった候補者がいたようだ。

 言語監督庁は,ロシア語の選挙宣伝文書が必要な場合,エストニア語のテクストにロシア語訳を添える形になっているのが好ましいとし,問い合わせがあればそのように指導しているという。ただし,言語法が規制しているのは,公共の場所で眼に触れる選挙パンフレット等の言語使用だけで,有権者に個別に直接配布される選挙関連文書での言語使用までは規制していないため,100%ロシア語で書かれた文書が,各有権者に直接配布されたとしても違法にはならないらしい。

 ロシア語だけの宣伝文書を印刷し配った候補者や政党関係者は,そうした理由として,ロシア語系の住民にエストニア語が書かれた文書を配ったところでまず読んでもらえないと考えられること,加えて,本音として,2言語の併記の選挙ビラは印刷費がロシア語のみの場合の5割増になって高くつくことを挙げている。

 エストニア語系の有権者にロシア語だけの文書が届けられたことについて,関係者は,配達を委託したエストニア郵便に対しては,ロシア語の定期刊行物を購読している住人にのみ配達するよう指示しており,郵便局側の不手際だと説明する。しかし,ロシア語が併記された選挙ビラに対してさえあまりいい印象を抱かないエストニア語系の有権者たちに,ロシア語だけの文書を届けてしまった候補者は,個人支持票を大量に失ったことだろう。

言語監督庁   keeleinspektsioon
直接送付    otsepostitus
薦める      soovitama
政党       erakond
宣伝       reklaam
地区       piirkond
エストニア語の eestikeelne
ロシア語の   venekeelne
外国語の    võõrkeelne
他の言語の  muukeelne
二言語併用の kakskeelne
翻訳       tõlge
社会民主党員 sots, sotsiaaldemokraat
郵送する    postitama
たとえば    näiteks
除外される   välja jääma
注意指導する korrale kutsuma
法律的に    juriidiliselt
法律      seadus
不適合     vastuolu
原則      põhimõte
助言を求める nõu küsima
言語問題   keeleküsimus
興味を覚える huvi tundma

エストニア言語監督庁長官 Ilmar Tomusk トムスク氏。この役所が Keeleamet
言語局と呼ばれていた頃から,エストニアの言語政策を管轄し,日本に来たことがある。
児童文学作家という,強面のイメージからは想像しにくいもうひとつの顔もある。
Keeleinspektsiooni peadirektor Ilmar Tomusk

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