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放射能と被曝 - kiirgus ja kiiritus

 福島県のすべての避難所で,被災・避難者が被曝していないかどうかを調べるスクリーニング (被爆検査) を行うことになったことが,エストニアでも写真入りで報道された。

 記事: Galerii: Fukushimast evakueeritud peavad läbima kiirituskontrolli (Postimees 2011/03/16)

 記事には「日本の福島第1原子力発電所の20キロ圏内の人々が退避し,全員被爆検査を受けた」とある。

原子力発電所   tuumajaam
退避させる     evakueerima
半径20キロ圏内で 20 km raadiuses
通過する      läbima
被爆検査      kiirituskontroll cf. 英語 radiation screening
被爆         kiiritus
原子力事故    tuumaõnnetus

 放射能被曝もここ数日毎日聞く言葉だが,要するに何を指すのか,私は本当のところよく分かっていなかった。唯一の被爆国,日本で教育を受けたのに,放射能がどういうもので,どう対処したらいいのかを,学校できちんと習わなかったのか,忘れてしまったのか,いずれにしても,自分でも呆れている。エストニア人はもっと分かっていないらしいことが,コメントから読み取れる。放射能や被爆ということばが意味しているものを,エストニア語の関連語彙を利用して勉強しなおしてみた。

 とりあえず対訳の形で並べてみると

 放射能をもつ,放射性(の) ─ radioaktiivne     ─ 英語 radioactive
 放射能            ─ radioaktiivsus     ─ 英語 radioactivity
 放射線            ─ kiirgus, radiatsioon ─ 英語 (ionizing) radiation
 放射線照射,被曝     ─ kiiritus        ─ 英語 irradiation; radiation exposure

 問題をややこしくしているのは,日本語の「放射能」が,日常的な用法では,放射線,または,放射性物資の両方の意味で使われることだ。つまり,「放射能漏れ」という場合,放射性物質そのものは放出されていないが,通常より高い放射線量が計測されたことを指す場合と,今回の原発事故のように,放射能を持つ物質 (=放射性物質) が外に放出されたことを指す場合との両方があって,この2つはかなり違うが,区別されていないことが多い。今回の原発事故で,事故のあった原子力発電所から離れた東京でも高い放射線量が測定されたのは,放射性物質が風で運ばれてきたためである。

 「放射能を浴びる」も正確な言い方ではなく,電気に照らされるように放射線を直接浴びる場合と,空中の放射性物質が髪の毛や衣類についたり,放射性物質を鼻や口から体内に取り込んだりした結果として放射線を長時間浴びる結果になるのとでは,対処のしかたが自ずから違ってくる。今回の原発事故で近隣の住民が避難したり,自宅退避したのは,後者,つまり飛来してくる微小な放射性物質に直接触れることを避けるのが目的である。

 放射能を浴びる場合,レントゲン撮影や放射線治療のように,医療的な目的で,健康に影響がない量の放射線を浴び(せ)る場合は放射線照射というが,被曝というと,人が不必要な量の放射線を浴びてしまうことを意味する。エストニア語や英語では,このような区別はとくにしないようである。被曝は,ヒバクシャというときの原爆被爆者の「被爆」と同音で漢字までよく似ているので紛らわしい。ヒバクシャとは,原爆の出す放射線を被曝し,後遺症に悩まされ続けている人のことである。

 毎日,各地の放射線の測定値が新聞に載るが,使われている単位は「シーベルト毎時」だそうである。つまり,その強さの放射線を1時間浴びると,その数字が表すシーベルト値の放射線量になるということのようだ。ただしこれは大変に大きい単位なので,ふつうはその100万分の1の「マイクロシーベルト毎時」 (μSv/h) を使う。文科省が発表したデータによると,水曜日 (3/16) の日中 (5:00~18:00) に東京で測定した放射線の最大値は 0.143 μSv/hで,これは平常時の上限 0.079 μSv/h の2倍近い値である。これは瞬間的な測定値だから,日中ずっとこの値だったわけではないが,もし,この強さの放射線を24時間ずっと浴び続けるとすると,1日の放射線量は 3.432 μSv ということになる。実際には1日でこの量の放射線を浴びたわけではないので,健康に被害があると恐れる必要はなく,東京ではふつうの日常生活を営んで構わないそうだ。 【補足】

 ところが,福島県では 20 μSv/hの強さの放射線が測定されているという。これは平常時の500倍の強さで,この強さの放射線を数ヶ月から1年毎日継続的に浴びていると,健康に影響が出てくるおそれがあるらしい。雪や雨を肌に直接浴びないようにレインコートや傘を差し,マスクなどをつけて,空気を直接吸い込まないようにする必要があるという。

 この放射線の(瞬間的な)強さと一定時間で浴びる放射線の量の関係は,昔数学で勉強した微分と積分の関係になる。数学がこんな形で役に立つとは思わなかったというのが正直な感想である。学校で学ぶことを侮ってはいけない。

 放射線量と健康への影響については,タルト大学の専門家の話をまとめた記事が載っている。

 参考記事: Radioloog: risk tõsiste tervisekahjustuste tekkeks on väga väike (Postimees 2011/03/16)

【補足】 日本の各地への放射性物質の飛来状況がわかるページが文部科学省のホームページにある。

 全国の放射線モニタリングデータ
 Information for foreigners on 2011 Tohoku district- off the Pacific Ocean Earthquake

 東京のグラフを見ると,3/15に異常に高い測定値 (午前中に 0.5 μSv/h) が記録されたあと,翌日の午後からはそれ以前の数値に近い(と思われる)値に戻っている。その後,3/21に測定値が 0.1 μSv/h を上回り,その数値が 3/24 も続いている。

 東京でこのところ続いている放射線の最高測定値 0.15 μSv の強さの放射線を1日24時間,1ヶ月間続けて浴びたとすると,単純計算で 111.6 μSv の放射線量になる。この値は,東京・ニューヨーク間を飛行機で1往復したときに浴びる推定放射線量 190 μSv よりはるかに少ない。にも関わらず,われわれは,ニューヨークへの旅行はちっとも怖くなくて,むしろ喜んで行くから不思議である。 放射線は確かに怖いし,事態がこれから悪化しないとは限らないが,今の段階で,東京に住む人が必要以上に騒ぎすぎるのは考えものである。 [2011/03/25]

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