もうたくさん - aitab
エストニア語の動詞 aitama は,もっともふつうには「手助けする」という意味だが,面白い使い方がある。
主語がなく,3人称単数でしか使わない動詞を文法では非人称動詞とよぶが,動詞 aitama を非人称動詞として使うと,「十分ある」「足りている」という意味になる。たとえば,ほんの少しだけコーヒーのお代りがほしいばあい,その量がカップに注がれたら Aitab, aitab! もう結構です と言う。「今日の勉強おしまい」をエストニア語に訳すには Tänaseks aitab. (今日はこれくらいで) がぴったりではないかと思う。
気のせいかもしれないが,この動詞はどちらかといえば,もうこれ以上はいらない,という否定的なニュアンスが伴うことが多いように思う。その場合,現時点で十分足りているものは,格の名前で言うと出格,つまり「~(の中)から」という形で表す。この用例は,選挙ポスターで頻繁に使われている。日本語に訳せば「~はもうたくさん」ということになる。かつて使われた「自民党政治はもうたくさん」というスローガンが懐かしく思い出される。
Aitab hinnatõusust! (値上げはもうたくさん)
Aitab Savisaarest! (サビサーレはもうたくさん)
などが,エストニアの選挙戦でポスターに実際に使われている。
メガネをかけた大桃美代子,もとい,中央党のイワノワ候補のポスター。
ロシア語は「値上げを阻止しよう」となっている。
中央党サビサール党首を批判するポスター [ 参考ページ ]
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