受刑者と選挙権 - vangide valimisõigus
エストニアの法務省 justiitsministeerium は,受刑者にも選挙権を与える方向での検討を今年の春に始めたそうである。
日本では禁固刑以上の受刑者は選挙権を失う。ところが,欧州人権裁判所は,2005年に,イギリスの殺人受刑者からの訴えに対し,すべての受刑者から一律に選挙権を奪うのは正当ではないという判決を下したそうである。欧州人権裁判所は欧州各国の最高裁判所の上にある司法機関と位置づけられている。イギリスの司法当局はしぶしぶ重い腰を上げて,重罪人でないかぎり,受刑者から選挙で投票する権利を奪わないようにする方向で検討中とのことである。
ヨーロッパ各国の政府は,この問題をそのままにしておくと,受刑者から出される損害賠償請求にいちいち応対していかなければならなくなる。欧州人権裁判所の判決はそれだけ意味が大きい。
しかし,重罪人でない受刑者から選挙権を奪わないことにする場合,重罪かそうでないかの間の線をどこでひくかが,非常にやっかいな大問題となる。また,もし受刑者に選挙権を与えることになった場合,刑務所の中における選挙運動のあり方をどう規定するかなども問題となる。
記事: Vangid võivad saada õiguse valida (Postimees 2010/11/05)
エストニアの受刑者に関する豆知識
・2010年11月1日現在,エストニアには 2667 人の受刑者がいる。
・刑務所の維持運営にかかる費用は,今年度の予算で 6億6700万クローン (49億円) 計上されている。内訳は,人件費 3億9400万クローン,建物の維持費 9600万クローン,受刑者の食費 3100万クローン,医療費 1000万クローンとなっている。
・もっとも受刑者の数が多い順に,タルト刑務所 853人,ヴィル刑務所 737人,タリン刑務所 578人,ハルク刑務所 (Harku) 216人,ムル刑務所 (Murru) 288人。
・エストニア共和国憲法第58条: 裁判所から有罪を宣告され,刑務所 kinnipidamiskoht で受刑しているエストニア市民は,法律によって選挙に参加する権利を制限されることがある。
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維持管理 ülalpidamine
食事の提供 toitlustamine
医療費 meditsiinikulud
憲法 põhiseadus
法律 seadus
制限する piirama
市民,国民 kodanik
参加 osavõtt
投票 hääletamine
有罪判決を下す süüdi mõistma
有罪の判決を受けた人 süüdimõistetu
刑務所で受刑する,収監されている vangis istuma
欧州人権条約 Euroopa inimõiguste konventsioon
欧州人権裁判所 Euroopa Inimõiguste Kohus
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