サウナ - saun
サウナというとフィンランドというイメージだが,いわゆるフィンランド式のサウナはエストニアでも古くからある標準的な入浴方法である。まだソビエト時代の1980年に2ヶ月ほど私がホームステイ (=居候) させてもらったタリン郊外の家には,内湯がなくて,家族と一緖に湯屋というか,公衆浴場に連れて行ってもらったことがある。公衆サウナには,バスタブもいくつかあって,そこで身体を洗うこともできたが,どうも追加料金がかかったようで,ブリキのバケツだけ借りて湯をいれて,立ったまま身体を洗う人が多かったような気がする。行く機会はなかったが,ソビエト時代でも農村部にはコルホーズの共同サウナがあったはずである。私の知人の家では,その後,息子たちが大学を卒業して働き出し,家族の生活が安定してくると,息子たちが自前で庭にサウナを建てたので,私はタリンに行くと,サウナが目当てで何度もお邪魔した。
参考までに,街の公衆浴場はフィンランドでもサウナだった。サウナは,フィンランド湾沿岸地域の文化なので,ロシアのレニングラード州 (ナルヴァ川東岸) でも見られる。カレリアでもふつうにあるはずだが,残念ながら私は行ったことがない。湯屋の入り口ののれんの「ゆ」は,エストニア語やフィンランド語に訳すなら「サウナ」(saun, フィンランド語 sauna) しかない。たとえば,宮崎駿のアニメ映画「千と千尋の神隠し」 Vaimudest viidud のエストニア語吹き替え版で字幕を出すと,湯屋の入り口のシーンで Saun という字幕が出る。
時代は変わって,今では,シャワーだけでなく,サウナのある家に住むエストニア人が多くなった。サウナについては,酔っ払って入ると危険だということと,心臓疾患のある人は避けたほうがいいという話を除くと,あとは健康的にいいという効用の話題しかないような気がする。ただし,一度に余り長い時間サウナの中に座り続けるのは健康に良くない。5~10分の間隔でサウナの外に出て身体を冷やすことを何度か繰り返すのが,正しいサウナの入り方とされる。サウナに詳しいエストニアの健康センターの専属医師 Peeter Kudu さんによれば,この熱と冷却の交代が,血管の血の循環をコントロールし,高血圧の人の血圧を適正な値に下げる効果をもたらすという。
日本のサウナは,蒸気の量を自分でコントロール出来ないしくみになっているが,(フィンランド式)サウナは本来,石を熱した上に自分で水をかけて蒸気を発生させるしくみなので,温度や蒸気の量を調節できる仕組みになっている。サウナはできるだけ蒸気を多く満たして湿度を高くして入るのが呼吸器のためにいいと言われる。
記事: Saun aitab ravida kõrget vererõhku (Tarbija 2010/11/10)
読者のコメントは,写真でひとりサウナに座っているのは,男か女かという話題で盛り上がっている。顔をみると男のように見えるのだが,男ならタオルで胸を隠したりはしないはずだという指摘は的を得ている気がする。また,ネイルカラーをしているから女だとする意見もあるが,この写真からはそこまでは確かめられない (私の目が悪いのかもしれない)。一方,写真に写っているのは,記事に登場する Peeter Kudu さん自身に違いないとする読者もいる。もちろん,サウナに血圧の調節への効果があるとしても,記事に書かれているような単純な話ではないとする真面目なコメントもある。
細かい話だが,エストニア語の saun は,各変化させると,たとえば sauna サウナの,saunas サウナの中で (入浴中で) のように語幹の母音 a が現れるので,フィンランド語の sauna と同じ語源の単語であることがわかる。なお,英語にも sauna という語が入っているが,英米人はなまって [sɔːnə] ソーナと発音するのがふつうである。なお,入浴方法や風呂場だけでなく,庭などに作られている別棟のサウナ小屋も saun と呼ぶ。
関連ページ: 宮崎駿のアニメ - Vaimudest viidud (2010/10/07)
サウナ saun
治療する ravima
高い kõrge
血圧 vererõhk
高血圧症 kõrgvererõhktõbi
サウナに入浴する saunatama
血管 veresoon
心臓の欠陥 südamepuudulikkus
サウナの座台 lava
冷却する jahutama
熱い,熱 kuum
寒い,冷たい külm
収縮する ahenema
拡張する laienema
気道 hingamisteed
乾いた kuiv
湿った niiske
湿度 niiskus
空気 õhk
病気 haigus
たん(啖) röga
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