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コルベレ城 - Koluvere loss

 ソフィ・オクサネン Sofi Oksanen の「粛清」の舞台となる主人公 Aliide の住む家のある場所は,Koluvere コルベレという村である。タリンから南西方向, Haapsalu ハープサルに向かう国道を3分の2ほど行ったところに Risti リスティという町がある。ここで左折して 10 キロ余り南下した所にあって,コルベレ城 Koluvere loss で有名なところだ。13世紀にはすでに石造りの城がこの地にあったという。コルベレ城は,18世紀にエカテリーナ2世 (在位 1762-1796) の所有になる。参考までに,タリンの合唱祭広場 Tallina Lauluväljak ある地区の名 Kadriorg カトリオルクは「エカテリーナの谷」という意味だが,これは,ペテルブルクを築いたピョートル1世が妃エカテリーナのために作った別荘地に由来するらしい。

 関連ページ:
 Koluvere piiskopilinnus (Vikipeedia) [概観] - Kolovere Loss [詳細]
 Koluvere Castle - Koluvere Loss [簡単; 英語]
 エストニアの城 - linnus, loss, kindlus, mõis (2010/10/14)

 小説 (あらすじはここ) は,Zara ─ 主人公の姉の孫で,ウラジオストクで生まれ,ベルリン経由でタリンにやってくる ─ が,タリンで客 (組織のボス) を殺して逃げ出し,Aliide の住む家にたどり着いて,庭に倒れているのを Aliide が見つけるところから始まる。

 建物の裏口から逃げ出した Zara は,タリンの中心街を歩いて抜け出し,道路に停まっていたトラックの荷台にこっそりもぐりこんでタリンから離れる。この時点では,Zara はタリンから遠ざかることしか考えていないから,トラックがどこに向かって走っているのか知らない。途中でトラックを降りた Zara は一旦森に身を隠すが,ふたたび道路に出て,ヘッドライトが片方しかついていない中古乗用車がやってきたので,こういう車の所有者なら安全だろうと停める。運転手の老人が Risti の自宅に帰える途中だったというのは,話が出来すぎだが,小説だから許すことにしよう。Zara は最初その老人の家に連れてこられるが,老人が寝てしまうと,こっそり起きだして,懐中電灯と地図を盗んで逃げ出す。時刻は午前3時,それから,地図を頼り に歩いて歩いて Kokuvere のどこかにある Aliide の家にたどり着く。これが Zara の回想シーンの一番最後の部分になり,読者は,小説を285ページまで読み進んだここで初めて,冒頭のシーンで Zara がなぜ庭に倒れていたのかがわかる。ここで第3部が終わる。

 Zara は逃げていく森の中で,今の自分を,エカテリーナ2世によってコルベレ城に幽閉されて死んだと伝えられる姫アウグスタ Augusta の境遇に重ねあわせる。この姫にまつわる話は実話のようだが,Zara はその話を祖母 Ingel から聞いたことになっている。

まわりの森が息づき,咳きこんだ。汗が冷え,しばらくすると身体がまた温まる。足を止めるたびに,死んだコルベレの姫からうなじに息を吹きかけられているように感じた。たしかアウグスタという名前だった。おばあちゃんから,アウグスタ王女の話を聞いたことがある。リスティを離れてコルベレ城へ移った王女は,目が腫れてあかなくなるまで泣き,そして自殺した。(日本語訳 p.298; 原書 p.283)

 中世の城は牢獄としても使われている。捕虜や罪人が多かったのだろうが,姫が閉じ込められたケースは,日本で言う座敷牢に当たるのかもしれない。コルベレ城は,エストニア独立直後の1919年に国有財産になった。2005年に民間に売却されたらしい。

Koluvere piiskoplinnus
Kolovere loss

Auguste Caroline Friederike Luise (1764-1788)
Auguste Caroline Friederike Luise 1764-1788

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