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エストニア語を守り育てる - eesti keele hoidjad

 言語の維持にもっとも貢献しているのは誰か,エリート層なのか一般大衆なのか,という議論は別として,エストニア語に関わる機関や組織団体は,エストニアにとって,固有の文化を守るいわば防衛組織のような位置づけにある。エストニアのイルベス大統領 Toomas Hendrik Ilves が,今週 (11/17),エストニア語審議会の代表と会合し, エストニア語研究所と母語学会を訪問した。

 会合での話題は,ここで何度も話題にしている言語政策や学校教育が中心テーマだったようだ,そのほかに,大統領は,エストニア語の辞書編纂の現状や,エストニア語のテキスト読み上げシステム tekst-kõnesüntees (text-to-speech synthesis) の開発についても説明を受けたそうである。

 記事: Ilves kohtus eesti keele hoidjatega (Postimees 2010/11/17)

 エストニア語審議会 Eesti keelenõukogu は,エストニア語に関する政策決定において,教育科学大臣に助言を与えるためのエストニア語の専門家をメンバーとする学識者の集まりで,2001年に作られた。現在,タルト大学教授の Birute Klaas さんが会長を務めている。[ ホームページ ] 日本の国語審議会に相当するものと考えていい。エストニア言語庁長官の Ilmar Tomusk 氏もこの審議会のメンバーである。

 エストニア語研究所 Eesti Keele Instituut は,エストニア語の学術的研究を専門とする研究機関で,現在,タルト大学教授の Urmas Sutrop 氏が所長を務めている。[ ホームページ ] 日本の国立国語研究所の昨年10月に改組される以前の位置づけに近い研究機関である。エストニア語大辞典の編纂主任の Margit Langemets さんもここに所属している。この研究所の前身は,ソビエト時代に Eesti NSV Keele ja Kirjanduse Instituut エストニア・ソビエト共和国言語文学研究所と呼ばれていた研究機関である。ただし,ソビエト時代にも文学やフォークロアの研究者は,タルトの Eesti Kirjandusmuuseum エストニア文学博物館と同じ建物に同居していた言語文学研究所分室で研究を行っていたが,現在は,文書図書館部門と研究部門とが統合されて,1つの組織に改組されたようである。

 母語学会 Emakeele Selts [ ホームページ ] 1920年にタルト大学の中に作られた学会組織で,ソビエト時代には,エストニア科学アカデミーに組み入れられた。フィンランドの Kotikielen Seura (cf. 日本の「国語学会」) と同じような性格の学会として発足したもので,学会誌として Eesti Keel (エストニア語) を発行した(1922-1940)。現在は非営利団体で,Oma Keel (2000-) という一般向けの言語雑誌を年2回刊行し,学会独自の刊行物としての方言資料集の出版を継続的に行っている。現在の,会長はタルト大学教授の Helle Metslang さんだが,学会役員の名簿を見ると,会長を含め,エストニア審議会のメンバーの人が多い。

会合する      kohtuma
維持する,守る  hoidma
委員会,審議会  nõukogu
母語        emakeel
学会,協会    selts
会長,代表者   esimees
高等教育     kõrgharidus
科学,学術    teadus
概観        ülevaade
言語法       keeleseadus
手に入る,利用可能な kättesaadav
説明・紹介する  tutvustama
国家元首     riigipea
活動        tegevus
テクスト・音声合成 tekst-kõnesüntees
訪問する     külastama
設立する,創立する asutama

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