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ノーベル文学賞 - Nobeli kirjanduspreemia

 今年のノーベル文学賞は,10月7日,ペルーの作家に決まったが,一般にはあまり話題にはなっていなかった作家らしい。スペイン語の翻訳関係者たちは忙しくなるだろう。

 エストニア人でノーベル文学賞候補が囁かれた最初の作家は,戦前の A.H. Tammsaare A・H・タンムサーレ (1878-1940) だと言われている。いまのところ,エストニアはノーベル文学賞の文脈では日本で話題になったことはないようだが,通信社や新聞社の話を信じるなら,21世紀に入ってから最終選考まで残ったか,それに近いところまで行った(らしい)エストニア人作家は2人いる。2007年の暮れに亡くなったが,小説の日本語訳が出ている Jaan Kross ヤーン・クロス (1920-2007) と,日本では詩人として知られ,来日したこともある Jaan Kaplinski ヤーン・カプリンスキ (1941- ) だ。ヤーン・クロスは残念ながら故人なのでもう可能性はなくなったが,カプリンスキの方は,今年も名前が少しは囁かれたらしい。ノーベル文学賞発表の日の10日ほど前に,共同通信社から電話があった。こういうことは以前にも何度かあったので,カプリンスキの経歴や作品についてはある程度調べてあるのだが,今回も試験直前の復習のような気持ちで,改めてもう一度,資料にひととおり目を通した。結果は,何事もなくて,ほっとした。

参考ページ:
 A.H. Tammsaare A・H・タンムサーレ (1878-1940)
 エストニア文学の巨匠:A・H・タンムサーレ (2010/01/20) - 著作権 - autoriõigus (2010/03/02)
 Jaan Kross ヤーン・クロス (1920-2007)
 Jaan Kaplinski ヤーン・カプリンスキ (1941- )

 ノーベル文学賞関連の記事では,Postimees 紙が社説で,「ノーベル賞は今年もエストニア文学の横を通り過ぎた。作家たちは,自分の作品が外国語に訳されるようもっと心を砕くべきだ。」という内容のことを書いている。もうひとつは芸能ネタに近いが,スウェーデンの新聞 Dagens Nyheter (毎日新聞?) の当日の紙面で,女性評論家が Sofi Oksanen ソフィ・オクサネンの名前まで挙げていたという話も,ノーベル文学賞発表時間の40分ほど前に,Postimees のウェブサイトに掲載された。

 記事: Juhtkiri: Nobel ja Hurt
 記事: Sofi Oksaneni pakutakse Nobeli kirjanduspreemia võitjaks

 話は変わって,Sofi Oksanen について。エストニアでも今のところ好意的な評論ばかりという印象があるが,ここにきて,かなり厳しい評価をくだす女性評論家が現れたらしい。 Piret Tali ピレト・タリ氏で,Sofi Oksanen 評論としては最初と思われる否定的なトーンの評論の原稿をフィンランドの文芸誌に投稿したという。彼女によれば,作品の文学的虚構の部分が,歴史的なドキュメンタリーであるかのように誤って受けとめられるおそれがあるというのだ。また,東ヨーロッパ出身の作家たちが,犯罪や暴力の世界を構築して,それについて書くということを繰り返していることにも問題があるとする。

 確かに,オクサネンの「粛清」については,スターリン体制下のソ連邦時代とソビエト体制崩直後の時期のエストニアを舞台にしたフィクションであるにもかかわらず,それが歴史的なノンフィクション物語であるかのように受け止められて,それが人気の理由になっていると思われるふしがある。スターリン時代の事情をある程度知っている人が読めば,これはフィクションだという部分がわかるけれど,そうでない現代の読者,とくに共産主義の経験のない国々の人々が読むと,ノンフィクションの作品だと勘違いする可能性は大いにありそうだ。そのうち,若いエストニア人女性読者まで,これが自分たちの祖母たちの時代だったのかと思い込む時代が来る可能性がまったくないとは言えない気もする。

 かつてソルジェニーツィンの「収容所群島」が世に出たとき,それをソ連社会を批判する内部告発的なノンフィクションであるかのように読んでしまった人も多かったのではないか。今はそれほど読まれない作品とは思うが,文学作品がそういう読み方で読まれ,そういう評価のされ方で評価されるということが,文学作品にとってどういう意味を持つのか,ということは考えてみてもいいような気がする。
 
 フィンランドの作家オクサネンがフィンランド語で書いた作品のおかげで,エストニアが今世界の注目を浴びているというのも,またまぎれもない事実である。このブームが,エストニア語の文学に対する興味に結びついてくれれば,儲けものかもしれない。

 記事: Ajakirjanik: kunstiline kujund seguneb ajalooga
 関連ページ: ベストセラー作家 - kirjanik (2010/09/12)

お~い,ノーベル文学賞よう!
Juhtkiri: Nobel ja Hurt

Piret Tali
Piret Tali.

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