エストニア語の国語辞典 - Eesti keele seletav sõnaraamat
エストニア語をエストニア語で説明してある辞典をエストニア語の国語辞典と呼ぶことにすると,エストニア語の国語辞典は3種類出ている。
・Eesti keele seletav sõnaraamat. (Eesti Keele Sihtasutus, 2009) [エストニア語大辞典]
・Eesti keele rahvasõnaraamat. (Kirjastus TEA, 2008) [小辞典普及版]
・TEA koolisõnastik. Eesti keel. (Kirjastus TEA, 2008) [小辞典学校用]
エストニア語大辞典は,もっとも大きいエストニア語の辞典である。オンライン書店 Apollo のサイトのこの辞典のページには次のような解説が書かれている:
2番目と3番目の辞書は,私が確認した限りでは,内容的にはまったく同じで,後者は,前者を2色刷りにするなど少しレイアウトを変更し, CD-ROM版を付録に付けて学習辞典の形式にしただけのものであるから,実質的には,エストニア語の国語辞典は2種類あるだけになる。学習辞典版はレイアウトの変更の結果,普及版より分厚くなっている。なお,この小型国語辞典は,見出し語が 15000 語と非常に限られているので,本格的な辞書として使うには物足りないが,少ないながらも適切な用例が文の形で載っているので,外国人学習者も中級の段階になれば十分活用できると思われる。付属 CD-ROM の電子辞典は Unicode 対応ではなく,残念ながら,日本語 Windows では文字化けして使えない。
大辞典の初版は,ソビエト時代末期の1988年に出た第1分冊から刊行が始まり,約20年後の2007年に出た第26分冊目で完結した辞書で, Eesti kirjakeele seletussõnaraamat 「エストニア語詳解辞典」という名前だったから,この改訂で,辞書の名前まで変わったことになる。しかも,丸2年もたたないうちに改訂版が出るというのは,コンピュータの登場で辞書編纂技術が格段に進歩したとはいえ,異例のスピードである。旧版は6巻に納まり切れなかったような形の変則的な7巻だったが,この改訂で6巻にきれいにまとまった。ただし,2000クローン (140ユーロ,16000円) という値段に抑えるための苦肉の策かもしれないが,エストニアで出ている他の辞書に比べると,製本の点でやや見劣りがする。
辞書の名前の seletussõnaraamat / seletav sõnaraamat は,ロシア語の辞書名に使われる толковый словарь がエストニア語に入ったものと思われる。ふつう「詳解辞典」と訳されるが,外国語による対訳辞典ではない辞典,日本語風に言えば国語辞典のことである。あるいは,英英辞典という言い方にならえば,「エエ辞典」ということになる。ただし,「詳解辞典」はどうも耳に馴染まないので,私は「エストニア語大辞典」と呼ぶことに決めている。
エストニア語大辞典は,今年 (2010) 初めから,次のサイトで無料公開されている。オンライン版の大辞典は,定期的に改訂が行われているようなので,内容的には信頼度が高いが,使いやすさについては,印刷版の辞書のほうが個人的には親しみがもてる。
エストニア語大辞典のオンライン版: [EKSS] "Eesti keele seletav sõnaraamat"
関連ページ: エストニア語図解辞典 - piltsõnaraamat (2010/10/05)
関連ページ: 勲章 - teenetemärk (2010/02/04)
関連ページ: エストニア語・ロシア語辞典 - sõnaraamat (2010/03/04)
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コメント
いつもブログ拝見させていただいております。
故あってエストニア語を勉強する羽目になりまして、先生の情報を大いに参考にさせていただきながら、ロシア語経由で独習しております。
TEAの辞書に付属しているCD-ROMの電子辞書が字化けするとのことですが、Windowsの「コントロールパネル」→「地域と言語」→「管理」→「Unicode対応ではないプログラムの言語」で「エストニア語」を選択すると(再起動が必要ですが)きちんと表示されました。
投稿: CD-rom | 2011/06/12 14:44
貴重な情報,ありがとうございます。試してみます。
投稿: ブログの主 | 2011/06/12 21:42
CD-rom さんのご指摘ですが,問題点があります。この設定をすると,すくなくとも私の Win 7 (32 bit) マシンでは,メールソフトのThunderbird で一部の日本語のメールが読めなくなってしまいました。設定をもとにもどしたところ,メールは救われましたが,辞書は文字化けするようになりました。
というわけで,私は辞書を捨ててメールソフトのほうを救いました。もしこの方法を試される方は,自己責任でお願いします。
投稿: ブログの主 | 2011/06/14 19:58