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バイリンガルの高校 - kakskeelne

 エストニアでは9月1日から新学期が始まった。

 タリンとナルヴァの中間辺りにラクヴェレがあるが,そのラクヴェレとタリンの中間辺りを北に行ったところにロクサ Loksa という町がある。この町のエストニア語系の高校とロシア語系の高校が統合されて,新学期から Loksa Gümnaasium (ロクサ高校)と呼ばれる二言語併用,今日本ではやりの言い方をすればバイリンガルの高校として第一歩を踏み出した。今年度の生徒は,エストニア語系195人,ロシア語系170人。ロシア語系学校の生徒たちがエストニア語系学校の校舎に引っ越す形で新学期は始まった。

 記事: Loksal liideti eesti ja vene kool (Postimees)
 記事: Loksal liideti eesti ja vene kool (ERR)

 新しい高校の校長 Õnnela Tedrekin さんは「エストニア語系の子どもはロシア語を,ロシア語系の子どもははエストニア語を,それぞれが相手のことばを修得することを通じて,ともに成長していくのが目標です」と抱負を語る。映像で見る限り,インタビューをうけた生徒や生徒の親たちも,統合を好意的に受けとめているようだ。

 入学式だけは,講堂の生徒を入れ替えて,エストニア語とロシア語で別々に行ったが,今後すべての学校行事は,エストニア語系とロシア語系の子どもたちを一緒にして行うことになっているという。これだけ大きく報道されると,二言語併用学校のテストケースとして,しばらくの間注目を浴びるものと思われる。

 読者の反応は,否定的なものが圧倒的に多い。もっとも多いのは,感情的な反発で,「エストニア語系の学校をロシア語化しようとするものだ」といった極端なものは別としても,「エストニア人の子どもはロシア語を話すようになるかもしれないが,ロシア人の子どもはいつまでたってもエストニア語を学ばないことはわかっているではないか」というステレオタイプの意見が根強いことがわかる。

 興味深いのは,かつて二言語併用学校 segakool に通った経験のある読者の意見が二通りあることだ。「子どもたちの間のケンカが絶えなかった。仕掛けるのはいつもロシア語系の子どもだったのに,校長室に呼ばれると,いつもエストニア語系の子どもばかり叱られた」「ロシア語系の男の子からいじめを受けた。こわかった」というような体験を語る読者がいる一方では,少数ながらも,正反対の体験を語る人たちもいる。

 「私が通った学校では,ロシア語系の子どもたちはみなエストニア語が上手で,私がロシア語を話そうとすると,エストニア語でいいよ,と言ってくれ,みな優しかった」
 「私が通った学校では,エストニア人の女の子がアイドルになっていて,ロシア人の男の子たちが一生懸命エストニア語で話しをしようとしていた。ロシア人の子どもたちも卒業する頃にはみなエストニア語が上手になっていた」

 否定的な話も肯定的な話も,ともに実際の体験に基づいたものだろう。偏見には,他人から吹き込まれるもの以外に,自分の個人的な体験に過ぎないものを,一般的な事実として解釈しようとするところから生まれるものもある。ロシア人といい付き合いをしてきた (と思われる) エストニア人の中には,次のように考えている人もいる。

Jah, eesti ja vene õpilastel on temperamendi vahe. Vene laps ütleb sulle otse välja, kui talle miski ei meeldi, aga ta ei saada sind seejuures kaugele ja sügavale. Olen ise eestlane, aga võin väita, et vene laps on siiram kui eestlane.
 エストニア人とロシア人の生徒は気質が違う。ロシア人の子どもは,いやなときはいやだとはっきり言うが,遠くへ突き放したり,深く傷つけるわけじゃない。私はエストニア人だが,ロシア人の子どものほうがエストニア人の子どもより正直だと言い切っていいと思う

これも言ってみれば一種の偏見なのだが,こういう良性の偏見は社会にたくさんあるほうがいい。

一緒にする     liitma
エストニア語の   eestikeelne
ロシア語の     venekeelne
二言語併用の   kakskeelne
民族,民族集団  rahvus
授業で使う言語  õppekeel
式典         aktus
発達する,成長する arenema
教室         klass
校長         direktor
二言語併用学校  segakool

【補足】 2010/10/17 事実関係に不正確なところがあったのを修正しました。

Loksa Gümnaasiumi direktor Õnnela Tedrekin.

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