外交特権 - diplomaatiline puutumatus
外交特権 (英語 diplomoatic immunity) というのは,外交関係に関するウィーン条約 (Viini konventsioon) に基づいてきまっているものらしいが,ふつうは,外国の大使館の敷地内が治外法権であることとか,外交官が犯罪を犯しても逮捕されないことなどと思っておけばいい。ただし,本当に迷惑な外交官の場合,外交官を受け入れている国の政府には,その人を persona non grata 「好ましからぬ人物」として,国外退去を命じることができるような取り決めになっている。ペルソナ・ノン・グラータというと「スパイ」を連想するが,国家機密に関わる情報収集のような活動だけが,受け入れ国の迷惑になると考えるのは当たっていない。外交官といえども特別に高貴で高潔なわけではなく,さまざまな個人的な悩みや問題を抱えている (のがあたりまえな) 普通の人間であることを思い起こそう。
タリンのロシア大使館の運転手 (49歳) が,先週の木曜日の深夜11時ころ,酒に酔って外交官ナンバーの Volvo 車を運転し,カトリオルク Kadriorg の道路の反対側の車線を走っているところを,市民の通報で駆けつけた警察が停車させた。この運転手は,現場に呼ばれた大使館員に付き添われて帰って行ったという。この大使館付運転手は,2週間前の7月9日の朝5時20分にも,酔っ払い運転で走り回っているところを,警察に取り押さえられているらしい。
エストニアの警察は,このロシア人運転手を逮捕することはもちろん,任意で警察に同行させることもできない。外交特権があるためである。警察からの報告を受けたエストニア外務省は,この運転手が2度も酔っ払い運転で警察のやっかいになったことをロシア大使館に伝え,説明を求めたという。
記事: Välisministeerium kutsus Vene saatkonna esindaja selgitusi andma
記事: Politsei: diplomaatilise puutumatusega inimesed satuvad liikluspolitsei huviorbiiti harva
記事: Vene saatkonna autojuht tabati taas joobes juhtimiselt
この運転手がどのような取り扱いを受けるかは,ロシア側が決めることである。十中八九,本国召喚だろうが,そのあと,エストニア政府の「好ましからぬ人物」のリストに名前が書き込まれることになれば,少なくとも外交官としては,もうエストニアには入国できなくなるだろう。
外交使節,大使館 saatkond
大使館員 saatkonna töötaja
外交官 diplomaat
運転手 autojuht, sohver
酒に酔って joobes, purjuspäi
運転する juhtima
停車させる peatama
深夜に hilisõhtul
外交官ナンバー diplomaatiline registrinumber
外交特権 diplomaatiline puutumatus
交差点 ristmik
外務省 välisministeerium
交通警察 liikluspolitsei
処罰する karistama
権利 õigus
拒否する keelduma
例外的なできごと erandlik juhtum
滞在先の国 asukohariik
派遣元の国 lähetajariik
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