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経済不況 - masu

 民俗学や文化人類学には,都市伝説などといって,町で広がる噂話を現代の口頭伝承として研究することがあるらしいが,エストニアでも当然よく似た例がある。

 記事: Masuaegne äriidee: anna piletiraha! 不況時代の商売:「切符代がないんです」

 タリンの中心部にある一流ホテルや高級デパートの前で,家に帰りたいがお金がない,切符代をめぐんでください,とロシア語で物乞いをして歩く女性がいるという。行き先は,ペテルブルクだったり,ノブゴロドやモスクワだったりして,だいたい 40 クローン (320円) くらいを求めるらしい。読者は,コメントで,その女性を3年くらい前から見かけている,私の家族に2度も声をかけられた者がいる,タルトでも若い女性が物乞いをしている,などなどいろいろな「情報」を寄せている。写真を撮った記者は,このロシア人女性は2ヶ月この仕事をしており,おそらくオーストラリアあたりまで行けるお金を貯めているだろうと茶化す。

 1970年代の終わり頃,フィンランドのヘルシンキでは,ビールを買いたいといって1マルカ (1 markka = 20円) 程度のお金をせびる酔っ払いがいて,私も会ったことがある。せびられた男が「えっ,ビールがそんなに安いのかい? だったら俺にも1本買ってきてくれ」と言ってお金を渡した,というようなジョークを,確か新聞で読んだ。そうとう有名だったから,何人も同業者がいたのかもしれない。

 1980年代は,山手線の駅で寝泊まりするホームレスに対して,今よりは寛大で,池袋駅にも「池袋さん」と呼ばれる有名人がいたようである。池袋さんはきっと「池袋駅XX通路Y番目の柱」というような住所表記で手紙を受け取るに違いないという話を誰かとしたような気がするが,記憶は定かではない。

 経済不況のことを,エストニア語では majandussurutis というが,余りにも長い単語なので,ふつう majandus 「経済」とsurutis 「不況」それぞれの第一音節だけとって masu という言い方が一般化している。ただし,この単語はまだ辞書には登録されておらず,正式なエストニア語単語として認知されていない。

 参考ページ: Keeleteadlane: ka «masu» võib varsti sõnaraamatusse jõuda 言語学者: masu が辞書に登録されるのは時間の問題

 ネット検索で masu を見つけるには,エストニアにあるエストニア語のページと指定するといい。masu と majandussurutis の両方をキーワードに指定して検索すると,この2つが同じ意味だと言うことが書かれているページがヒットするので,疑いをもった人は確認してください。


語彙
 masu       経済不況 (< majandussurutis)
 masu ajal         不況の時に
 masuaegne         不況の時の
 äri            ビジネス,商売
 kojusõit         (電車,バスなどによる) 帰宅
 veenvus          説得性,もっともらしさ
 kohver          スーツケース
 piletiraha        切符代
 kerjama          乞食をする

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