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文法 - grammatika

 日本語に限らず,一般の人が文法というときは,受身文とはどういう文か,というような話ではなくて,この言い方は正しいのかどうか,というような,言語学の専門的な言い方をすると「規範」と呼ばれる領域の話題であることが多い。

 例えば,「読める」はいいが「食べれる」は「ら抜き言葉」だからだめ (「食べられる」が正しいとされる),「食べさせる」はいいが「読まさせる」は「さ入れ言葉」だからだめ(「読ませる」が正しい)といったような話ががよく聞かれる。

 エストニア語では,名詞の格変化をめぐってこの種の議論がよく起こる。20数個ある名詞の変化形のうちで,とくにやっかいなのが,複数分格形と呼ばれる形である。この形の意味を一言で言うのは無理だが,目的語の形のひとつと考えていただきたい。この形には,語尾のタイプが3つある。

 -sid:   例 ema : emasid 母親
 -id:    例 raske : raskeid 難しい,重い
 母音変化  例 maja : maju

 さすがのエストニア人でも,めったに使われない単語についてまで,どの語尾が付くかをすべて覚えているわけではなく,めったに使われない名詞にはどの語尾を付けたらいいか,その都度考えないといけない。また,新しい名詞が生まれたときにも,どの語尾を使うかが問題となる。

 『日本語アクセント辞典』という名前の辞典を見ると,日本語の「正しい」アクセントが分かることになっているのと同じように,複数分格形の作り方に迷ったときは「エストニア語正用法辞典」という辞典を見れば,その名詞の「正しい」語尾がわかることになっている。これまで,この正用法辞典に書かれている「正しい」語尾について,誰も正面切って異議を申し立てた人はいないようなのだが,ここに来て,インターネットで使われているエストニア語を調べたところ,名詞によっては,正用法辞典では正しいとされていない形が,いちばん多く使われるケースさえあることが明らかになってきた。 [ 記事ページ ] ちなみに,このところ一番勢力を伸ばしているのは,語形としては一番短い3番目の母音を変化させるタイプで,語形として一番長くなる -sid 語尾を部分的に押しのけている傾向が見られるという。

 「正しくない」いいかたは,それが少数の人だけが使っている間は,間違いと言い張ることもできるが,みんながそれを使うようになったときには,そうは言えなくなる。正しい言い方をしない人の方が多いことばなんて矛盾しているからだ。この場合どうするかと言うと,多数派が正しくなるように正用法辞典や文法書の内容の方を変えることになる。ことばは皆が日常的に使っているうちにどんどん変わっていくが,文法書や辞書の方はその変化について行けなくて,いつも後を追いかけることになる。

 コンピュータが登場し,インターネットができて,実際に使われている言葉の実態を把握しやすくなってきたので,これからは,文法や辞書も,どんどん変わっていくだろう。

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