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エストニア人の愛読書 - lemmikraamat

 エストニアのラジオ局 Elmar によると,エストニア人がもっとも好きな本は,O・ルッツ Oskar Luts (1886 - 1953) の Kevade (春) だという結果が,2月に行ったアンケート(回答者約1500人) で出た。[ニュースのページ] ベスト5は次の通り。

  1. Oskar Luts: “Kevade”
  2. A.H. Tammsaare: “Tõde ja õigus”
  3. Silvia Rannamaa: “Kadri. Kasuema”
  4. Andrus Kivirähk: “Rehepapp”
  5. Egon Rannet: “Kivid ja leib”

 1位の『春』と2位のタンムサーレ『真実と正義』は,日本で言えば,夏目漱石の『我が輩は猫である』,島崎藤村の『夜明け前』,太宰治の『人間失格』,宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のような,学校で必ず内容を教えられる作品で,平均的なエストニア人の基礎知識に属する作品である。ちょうど「吾輩は猫である。名前はまだ無い」「木曽路はすべて山の中である」が誰のどの作品の冒頭の文かを日本人ならたいてい知っているように,次の文が『春』の冒頭だということはエストニア人ならたいてい知っている。

 Kui Arno isaga koolimajja jõudis, olid tunnid juba alanud. アルノが父親に付き添われて学校に着いたとき,授業はもう始まっていた。

 しかし,この結果については,新聞サイト [記事ページ] にコメントを寄せたエストニア人は誰も納得していない。Yahoo! 知恵袋にならって「ベストコメント」なるものを勝手に選ばせてもらえるなら,このずれを次のように説明しているコメントを一押ししたい。「『春』の映画や舞台には良いものが多いと私は思うし,多くの人もそうだろう。しかし,原作をきちんと読んでみて,本当に面白いと思った人はいるんだろうか。みんな,自分にウソをつくのは止めよう」

 本当に好きで何度でも読みたいと思っている本ではなく,いわゆる優れた文学作品と言われているもののタイトルを挙げた人が圧倒的に多かったのではないか,というわけである。考えてみると,『春』の初版は1912年,『真実と正義』の第1巻初版は1926年,とくに『春』は戦後も何度も新版が出ている。「アンケートに答えた世代が年寄りなんじゃない?」というコメントもあったように,若い人たちが愛読書に挙げているとしたら意外な気がするのも確かである。

 『春』は1969年に映画化 (白黒) されている。2006年にはデジタル映像として復元されたDVDが出た。この映画で主人公アルノのガールフレンドを演じている Riina Hein というかわいらしい女優さんについてインターネットで調べてみたが,残念ながら情報はないようである。

 それはともかく,特筆すべきこととして,10位に児童書 Sipsik が入ったことに触れておく。私が好きな児童書の1冊で,2000年代にも刷られているが,主人公のシプシックが初めて登場したのは1962年。今のお母さんたちは,子どもの頃聞いたり読んだりしたことがあるだろうが,自分の子どもたちに読み聞かせている母親はあまり多くはいないだろう。『シプシック』については,私が勝手に作った「シプシックのホームページ」があるのでご覧いただきたい。エストニア語の文学についても簡単な解説ページがある。

 参考ページ: エストニアの文学 - シプシックのホームページ

語彙:
 raamat    本
 lemmik    もっとも好きなもの
 lasteraamat 児童書
 romaan   小説,物語
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