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エストニアの言語法改正案をめぐる論議

 この夏,7月ころからエストニアのマスコミが大きく取り上げているエストニアの言語法の改正案。いちばん論議を呼んでいたのは,インターネットのオンラインページを含めた新聞やテレビの言語使用が標準語の規範に従うことを義務づけ,かつ,それに違反した場合は報道機関に罰金が科せられるという2つの条項(第19条,第38条)である。

 9月28日に開かれた「報道機関の言語に関する公開討論会」(Ajakirnaduskeele seminar)では,タルト大学エストニア学科の教授を含む専門家や有識者,マスコミ関係者が,厳しい反対意見を述べた。その結果,報道機関の言語規制に関する条項を改正原案から削除するようにという勧告が,改正案を作成している作業委員会に対して行われ,同委員長が大幅に譲歩して,勧告に従った提案を次の委員会の席で行うと約束する形で落ち着いたようである。ただし,罰金規定については,条項そのものが削除されるというより,その条項から,報道機関に言及した箇所が削除されるという意味ではないかと思われる。[記事と映像]

 中でも面白かったのは,サーレマー在住のエストニア・テレビの通信員の指摘で,もしそんなことになったら,最悪の場合,私は原稿を送る毎に,罰金の請求書が送られてくることになってしまうというもの。サーレマーは標準語とはかなり違う特色のある方言で知られているだけでなく,エストニアの中でユーモアのセンスがいちばん高い地域とされている。サーレマー人の本領が十分に発揮された発言だった。

 タルト大学のエストニア語の教授は,法律で「報道機関の言語」(単数) と言うからには,それが法律的に厳密に認定できることが前提だが,言語学的にみると,報道機関の言語使用は多様であり,「報道機関の言語」と呼べるような単一の言語形態は存在しないからそれは不可能だと指摘した。

 言語法は,エストニアにおける「公的な言語使用」を規制する法律で,法律の文書,官公庁の広報,各種契約書などの言語使用はここに含まれるが,たとえば作家の文学活動は対象外である。報道機関の言語使用は,この意味での「公的な言語使用」ではないとする方向で意見が集約されたことになる。

 罰則の規定がある言語法と聞くと,言語警察 (language police) ということばを思い浮かべるが,じっさいに査察官が職場を巡回して立ち寄り目を光らせるような「オーウェルの世界」が提案されているわけではない。実際の適用にあたっては,著作権法などと同様に,違反があるとする訴えがあった場合に適用されることになる。

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